妊娠中の体重管理の目安。2021年、適正体重目安が変わりました!

体重管理。それは妊娠中の超重要課題。

十月十日で人ひとり、お腹で育てて産み落とすんですから増えるのは当然。体型だって変わります。たった数ヶ月の間に、体重計の数字がぐんぐん増えていくのはなかなか感慨深いというか、不思議な感じ。妊娠中に味わえるミラクル体験の1つとも言えます。ただ、個人的な意見としては、体重管理は厳密に行ったほうがよい。お腹の赤ちゃんの健康やお産のスムーズな進行、そして産後の回復(体調・体型・メンタル)に大きくかかわるものですからね。そして何より、“妊娠”と”出産”を自分ごと化して、きちんとコントロール下におくということにほかならないからです。

何キロまで増やすのか、妊娠が判明した時点の体型から目標を定めることになりますが、2021年3月、その指標となる「妊婦の体重増加指導の目安」が見直されました。妊娠中の体重の推移をどうやって管理するのか、そのコツを体重増加の目安と合わせてご紹介します。

Contents

妊娠中の体重管理、なぜ大切なの?

「定期検診の体重測定が恐怖」とか「担当医に体重増えすぎだと怒られた」とかって、とてもよく聞く話。実際に妊娠・出産を経験して、それがどうしてだかよく分かった気がします。妊娠23週までは4週間に1回、35週までは2週間に1回、臨月になると週1回の頻度で行くことになる妊婦検診では、必ず体重測定を行いその結果が母子手帳に記載されます。これがじわじわプレッシャーなんですよね。なんというか、自己管理能力を試されている気になってしまうのは私だけ? どれだけ食べたか、どれだけ動かなかったかが丸分かりになる気がしていました。

実際のところその通りで、規則正しい健康的な生活を送っていればドカンと太ったりやせたりすることはありません。体重は、赤ちゃんが健康に成長していっている目安の一つ。増えすぎはさまざまなトラブルの原因になりやすく、逆に増加が少なすぎると低出生体重児などのリスクが高まってしまいます。

太りすぎるとどうなる?

妊娠中に太りすぎてしまうと、さまざまなリスクが高まります。

出産前

  • ひざや妊娠高血圧や妊娠糖尿病などの合併症を起こしやすい
  • ひざや腰に負担が増えて痛みやコリの原因に

出産のそのとき

  • 微弱陣痛の原因になり出産が長引く
  • 産道に脂肪がつきすぎると赤ちゃんが下りてきにくい

産後

  • 慢性的な高血圧になるリスクが増える
  • 体型を戻しにくい

高血圧や糖尿病は赤ちゃんに影響を与えてしまう可能性も高く、注意が必要。ただでさえ妊娠中は神経質になっているのに、治療も並行するとなると制限が多く、気苦労が絶えません。また、出産がスムーズに進まなくなるという点も気になりますね。誰だって、産むならラクに産みたい! そして、「増えた分だけ、産後戻しにくい」というシンプルすぎるフレーズのダメージよ…。産後は体もボロボロですし、生活もガラリと変わります。もとの体重まで減らして、産前のようなスタイルに戻すのは簡単なことではありませんので、体重増加は適正範囲内に抑えておきたいところです。 

やせすぎるとどうなる?

妊娠中に必要な体重が増やせない場合にも、リスクがともないます。

お腹の赤ちゃんへの影響

  • 出生体重が2500g未満の低出生体重児になるリスクが高まる

赤ちゃんのその後

  • 赤ちゃんが飢餓状態で小さく生まれ生後急激に大きくなると、肥満や生活習慣病の発症リスクが高まる

出産時と産後

  • 出産に必要なエネルギー不足で、お産が重くなる可能性
  • 出産、育児と体力がもたず、産後の回復が遅れがちに
  • 母乳育児でさらにやせてしまう心配も

近年、妊娠中に体重が増えないママが増えてきているそう。私も妊娠中は、「太りすぎ、絶対ダメ!」という緊迫感を日々感じましたし、「体重増やしてないママ、偉い!」というような体重増加を抑えている妊婦さんに対する称賛の空気でさえあったと記憶しています。言っていることは決して間違っていないんですけれど、どこまで増やしていいのか&増やすべきなのかという明確な数値を曖昧にしたまま、「増やさない=正解」とする風潮になってしまっていたのが問題でした。

大事なのは、自分に合った適正体重を知って、そこに向かって管理をすること。赤ちゃんやママにかかるリスクを少しでも減らすためにも、どこまで増やすべきかを把握しておきましょう。

「妊婦の体重増加指導の目安」が2021年3月改正。体重制限がゆるやかに

妊娠中の適正体重は、指標をもとに妊娠前の体型から算出します。2021年3月、この指標となる「妊婦の体重増加指導の目安(日本産科婦人科学会)」が見直されました。簡単にいうと、やせているか標準体型なら、前の指標よりあと2~3㎏増やせいてもOK、ということ。体重制限がゆるめられたのです。

妊娠前のBMI妊娠中の適正体重〈改正前〉妊娠中の適正体重〈改正前〉
18.5未満+9~12kg+12~15kg
18.5以上 25.0未満+7~12kg+10~13kg
25.0以上 30.0未満個別対応+7~10kg
30.0以上個別対応
BMIと適正体重の指標

BMI値(Body Mass Index : 体格指標)= 体重(kg)÷{ 身長(m)× 身長(m)}

あんなに厳しく太るなプレッシャーをかけてきたのに、なぜ、ゆるめたのか? その理由は、低体重児出産の増加です。日本は、2500g未満で小さく生まれる、いわゆる低出生体重児の赤ちゃんの割合が先進国のなかでもとても多い国。戦後間もない1951年には7.3%でしたが、経済が発展し栄養状態や医療体勢が整っていくにつれ減少。1975年には5.1%にまで下がりました。しかし、国が豊かになってくると、妊婦の太り過ぎが問題視されてくることに。その影響で、近年まで「太りすぎてはいけない」という厳しい体重制限指導を行うことが主流になってきていました。そして低出生体重児の割合は増加に転じ、2005年には9.5%、2019年9.4%と現在まで高い数値のまま。

新生児のおよそ10人に1人が低出生体重児と聞くと、なるほどそれは多いな、と思いますよね。戦後よりも多いというのもちょっとした衝撃。そのせいで、やせ型や標準体型の妊婦に対して「従来の基準より体重を増やしてよい」という方向転換がなされたのです。

妊娠を希望する人、妊娠した人、経産婦の人、それぞれに体重管理を

「小さく産んで、大きく育てる」って、よく聞きましたよね。小さく産めば、ママにとって負担が少なくラクに産めるという願望と、小さく産まれても、その後しっかり食べさせて大きく育てればいいんだよ、という期待が込められたコトバでしょう。でも、もうもはやこれは神話。きちんと体重を増やしてちょうどよい大きさで産むのが正解です。

2021年はじめくらいまでに第一子や二子を生んだ方で、さあ、次の子を身ごもった、という方は驚かれることでしょう。目標値が2〜3㎏も違うんですから。あのとき怒られたの何だったの?と思う方もいらっしゃるかも。なんなら厳しく指導しがちだったドクターや助産師さん、ちょっと気まずいかもしれないですね。

私に至っては、BMI値が「やせ」と「標準」の境目すれすれ。体重の誤差でどっちに転んでもOKくらいの際どいラインでした。過去2回の妊娠では「標準」にカテゴライズされたので目安は+7〜12 kg。最小値の7 kgを目指して調整したけど、今後もし妊娠でもして、もしうっかり「やせ」にカテゴライズされたとすると…? 新しい指標だと+12〜15 kg。+7kgで考えていたのが+12 kgとは! ミニマムで比べても5 kgも違う。これまで何だったの感がすごい!!

そもそもBMIだけで肥満度を測るのがどうなのかという話もありますしね。肥満度の目安となる体脂肪率のこともあわせて考えると、BMI18.5、体脂肪17%以下のやせ型のママからは低体重児が生まれやすいとのこと。妊娠前の女性の体脂肪は22%以上が理想のようです。これから出産を希望している女性で、いまBMIが18.5未満、体脂肪17%以下のとってもスリムな女性は、妊娠をする前から、BMI、体脂肪率を標準に近い値にしておくことが大切ですよ。栄養バランスを考えた食事を摂って、ヘルシーな体を目指しましょう。

人によって、太りやすかったり、たくさん食べられなかったり、もとからスリムだったり、筋肉質だったりと、それぞれ体型にまつわる個性があることと思います。まずは、そうした体の状態・コンディションを把握しつつ、自分に合った目標を定めることが大切です。つわりで食欲が落ちるかもしれないし、逆に食欲が大爆発することもある。妊娠・出産はコントロールできないことばかりではありますが、体重をコントロールすることを決して諦めないで頑張りましょう。妊娠判明からお産に挑むその時まで、自分のイメージしたペースで体重を管理できているということは、“お産”に対するちょっとした自信にもなりますよ。

よろしければシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
Contents